「イケーーー!!!!!筆頭ーーー!!!!!!」 
「負けるな幸村ーーーーーーーー!!!!!!!」 
「アニキ、最高ーーーーーーー!!!!!!!!」 


もうね。毎年のことだけどうちの学校の体育祭は凄すぎるね。一人足を捻挫して席に残る私は完全にアウェイ
で、クラスの皆は学年対抗の障害物競走に出る人の応援に行ってしまった。本当は今やってる障害物競争には
私が出るはずだったけど、その一つ前のリレーで怪我をしてしまったのだった。

運動会。  
 
そもそも運動オンチな子に酷だと思わないのだろうか。って運動が出来る子の唯一の活躍の場だから無くしち
ゃダメなんだって先生が言ってたっけ、そういえば。でも一組の伊達君とか勉強もできるって聞いてるし、や
っぱり運動会は無くてもいいんじゃないだろうか。あ、真田君が勉強ダメだった。はあ、捻挫した足が痛い。
さすっても直るわけじゃないけど運動会というたった一日のせいで何日間も不自由する羽目になるなんて。暫
くは歩かないで休憩していなさいと言った保健の先生だけど、そもそもこれじゃ歩けそうにない。午後も競技
があったけど、この分じゃそれも無理だ。丁度よく隣の席に置かれていたプログラムの紙を拝借して午後の部
の確認をすると、私のクラスは綱引きがあった。まあ綱引きなら私一人がいなくても平気だろうな。でもお昼
前までに終わらせるはずの午前の競技がまだ二つ残っていた、これはどうするつもりなんだろうか。
 
「おい」
 
頭上から聞こえた低い声にプログラムから顔を上げると、見たことのない男子が立っていた。ゼッケンの色が
違うから先輩だった。 
 
「あ、はい。何ですか・・・?」 
  
声が不審になる。周りに人がいないからこの先輩と一対一なのもあるけど、先輩が凄く怖い顔をしているせい
もあった。一体何の用だろうか。
  
「障害物競走で指定された人間を連れてくることになっている」
   
速く立てと言いたげな目つき。手には指定されたことが書かれているんだろう紙が握られていた。ってことは
指定されたのは私なんだろうか。迷うことなくじっと私を見てくる先輩に今年の障害物競走は名指しなんだろ
うかと考えてしまった。まあ一人でいて話しかけやすかったんだろうな。初めてこういうので一緒に走るよう
頼まれたからよく分からないけど、  
 
「ごめんなさい、私、今怪我をしてるんですけど・・・」  
 
気づいていないのだろうか。止めた方が良いと暗に言うと、目の前の変に色白で強面の先輩は何も言わずに椅
子を掻き分けてこちらに来た。  
 
「え・・・・・?えっ!!」  
 
そしてそのまま勢いよく抱えあげられた。いわゆる姫抱きだ。この細い腕のどこにこんな力があるのか。がっ
しりと抑え込まれて足を動かして暴れることも抵抗することも出来ない。  
 
「すみません、本当に止めた方が良いと思います。私重いですし先輩細いから折れちゃいますよ。ていうか恥
ずかしいので本当に降ろしてください。お願いします先輩」
「黙っていろ」  
 
そう言うと先輩はさっさとコースに戻ると走り出してしまった。姫抱っこのままで。しっかり抱えてくれてる
から落下の心配は無さそうだけど、走ってるから揺れて不安定だ。仕方なく先輩の首に腕を回して落とされな
いようにしがみ付けば周囲から囃し立てる黄色い声と口笛が上がった。これは死ねる。そもそも私はこの先輩
の名前すら知らない。後で聞くために顔を覚えておこうと先輩を見上げると、びっくり。かなりの美形だっ
た。何という少女漫画展開だろう。
  
「一位おめでとうございまーす!」 
  
足はやっ。ゴールを目前にしてテープが見えた時にまだ誰もゴールしていないのだと気づいてびっくりした。
人を抱えて走っても一位って相当足が速いんじゃないだろうか。一位のリボンを受け取って指定された場所で
待機する。  
 
「あ、ありがとうございました。もう大丈夫ですよ」  
 
首に回していた手を解くと先輩がそっと地面に降ろしてくれた。ああ、恥ずかしかった。今更顔が赤くなって
きて地面に俯いて競技が終わるのを待った。足の痛みやらなんやらでそれどころじゃなかったのだ。結局紙に
どんな指定がされていたのか分からないけど、こういうのって聞くのは野暮なのかもしれない。あきらめよ
う。でも名前を聞くと石田三成、とだけ答えてくれた。結局先輩と話したことはそれだけで、他には何も話さ
なかった。そもそもあまり話すのが好きじゃ無さそうだったし、話す暇もそんなに無かったから、退場の曲が
流れて門まで送ってもらってお礼を言って終わってしまった。何で私がお礼を言う側にいたのか分からないけ
ど。まあ競争でのことだから私を選んだことにそんな深い意味なんてないんだろう。






 

「なんかね、今回の紙に指定されてた事って皆同じだったらしくてさ。好きな人だったんだって」
 
後日、友達を通して聞いたその事実にたまたま私が一人で席に残っていたから先輩に声を掛けられたのか、本
当にそうだったのかで悩むことになった。真相を知りたくても軽々しく先輩のクラスまで行く勇気も無くて悩
んでいると、教室のドアの前に立つ男子から声を掛けられた。 
  
「おい、石田先輩が呼んでるって!」 
 
だからこれ、なんていう少女漫画?そう思いながら呼び出された場所に行くと石田先輩に足のことを聞かれ
た。大丈夫だと答えたら、それが気になっていたのだとぶっきらぼうに言う石田先輩に呼び出された理由を勘
違いしてしまったことを恥ずかしく思った。 
 
「おーい!三成!!」 
  
突然、二階の窓から顔を出した別の先輩が大声で石田先輩を呼んだから何事かと石田先輩と二人でその男子生
徒を見上げると。  
 
「好きなら好きって、ちゃんと言わなきゃ駄目だぞー!!」
   
全校生徒のいる校舎に響いたその声に石田先輩が「家康ううぅぅぅぅう!!!」と怒鳴る。わらわらと他の階
の窓からも顔を出した生徒達の視線が集まって私の恥ずかしさもマックスに達して、石田先輩と二人でその男
子に怒鳴っていた。それがさらに事を大きくしているとも気づかずに。 
 
そんな私と三成君は今、恋人同士です。




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