好きな人ができた。
同じ電車に乗っていたのがきっかけだった。
彼を電車の中で始めてみたとき、あんな綺麗な男の子って現実にいるんだと
びっくりした。真っ白な髪と肌、それに落ち着いた雰囲気はまさに王子さま
だった。
が、さらに驚いたことに、なんと彼は自分と同じ学校の制服を着ていた。
自分自身、男っ気も恋愛もあったものではなかったっが、なぜ知らなかった
のかとそんな自分を呪った。王子様が現実にいないことくらい分かっていた
し、あらぬ幻想や夢を抱くような年でももう無いけれども、まさに彼を見た
その瞬間、彼以外の周りのものが一切シャットダウンされて、なにか納得の
いくものが私の中にすとんと落ちる感覚がしたのだ。
今までそんな感覚になったことはなかったけれど、それでもすぐに分かった。
 

恋だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その日以来、私は少し早めに家を出るようになった。
理由は彼と同じ電車に乗るため。あんまりじろじろ見るわけにはいかないか
ら遠目に、それもちらりと見る程度だけれども、彼の姿を確認できると一日
の始まりはそれですごく幸せな気分になれた。
我ながらなんて単純な頭だとは思うけれど、仕方がない。
彼はいつも本を読んでいる。
場所を決めていないらしく、乗るたびに居る場所が違うので彼に近づきすぎ
ず遠すぎないように座ろうとして私は気を使ってしまう。
友達のかすがちゃんにそれとなく、彼の容姿を伝えて知らないかを尋ねたと
ころ、知らなかったのかと逆にひどく驚かれてしまった。ええ、ごめんなさ
い。そういうのにひどく疎いと自覚はあるけれども。
が男に興味を示すのは初めてだな。
そう言ってかすがちゃんは彼について知っていることを教えてくれた。
竹中半兵衛。その名前を心の中で何度か繰り返す。隣のクラスで、豊臣君と
仲が良いらしい。何か病気を患っているらしく、結構頻繁に休むのだとか。
今のところ私は毎日彼を電車の中で見ることができている、ということはな
かなかラッキーなんだと嬉しく思った。もしかしたらこの先彼を見れない日
が来るかもしれないけれど。ああ、そうなったらすごく憂鬱だ。
私の一日の元気は竹中君からもらってるも同然なのに。かすがちゃんは何の
病気かは分からないといったけれど、大したことではないらしい。
そんな竹中君は頭がとてもいいと聞いて、私はすごく納得した。一目見て落
ち着きのある雰囲気や顔つきで、頭がよさそうだな、と思っていたからだ。
そっか、頭がいいのか。ってことはやっぱり竹中君も勉強ができる女の子の
方が好きかもしれない。それなら私、もうちょっと頑張らなきゃ。
ああ、でもその前にぜひ一度でいいから竹中君と話てみたい。どんな声なん
だろうか。隣のクラスでそう簡単に会う機会もないのならせめて朝一緒にな
る電車で何かきっかけがあれば。でもそれ以前にきっと竹中君は私のことな
んて知らないだろうな。うん、悲しいけどそれが現実。
でも話しかける勇気なんて私にはないし、周りの視線もあるから恥ずかしく
てそんなこと絶対に出来ない。でもこのままみてるだけなんて。
せめて竹中君が私の存在に気づいてくれればいつも一緒の電車に乗る人だ、
って学校で話すきっかけになるかもしれないのに。それかいっそ熱い視線で
も送ってみようか。でもそれで引かれたりなんかして電車の時間ずらされた
日には何もかも終わりだろうな。それは絶対できない!
ああ、もう、恋なんて初めてしたし、何をどうしたらいいかなんて分かるわ
けがない!ただ確かなのは竹中君と話がしてみたい、気づいてほしい、こっ
ち向いてほしいってこと。


竹中半兵衛君が気になって仕方がない。








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