鍛錬を終え部屋へ戻ろうと向かっていた三成の行く手を阻むものがあった。
「・・・一人で出歩くなと言っていたはずだ」
「這ってでも行きたいところがありました」
廊下に転がる人間の姿を見つけた三成は、幽霊の類かと一瞬己の目を疑った。
しかしそれは何てことはない。
数ヶ月前に目に余るからと、側に置いておく事に決めた女の姿だった。
じばばたと手足をもがつかせる女を上から見下ろし、三成は言う。
「私が連れて行ってやる。どこに行きたいのか言え」
腕を起こし、上半身の体勢を整えた●は三成と目を合わせると
花が咲き綻ぶような笑みを浮かべた。
「貴方のもとです」
廊下に寝そべる彼女を抱き起こすべく、三成は手を伸ばした。
そんな三成にはまだ、●に言っていない事がある。
それは新たにかかった病についてだった。
わたしだけが知っていた世界の嘘
それは見えない
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